アイシールド21という漫画からは、学ぶことが多くあると思います。
アメリカンフットボールという日本人にとっておおよそ交わりのないスポーツからは思えないほどに僕たちの心に共感、感動、楽しみを与えてくれたスポーツ漫画の名作です。
連載終了から10余年立っている今でも、多くのファンがいるこの作品を今回はレビューしていきたいと思います。
学生時代に熱中をしていた作品を大人になって読み返し、そこから学べることは何なのか。
良ければ、読んでいってもらえれば幸いです。
目次
アイシールド21という作品の概要。
この作品は一言で言えば、
天才と凡人
ここにフォーカスした作品であると思っています。
とてつもない天才とその才能に羨望し苦悩する凡人の葛藤というのが一作品のテーマとなっています。
僕たちは常日頃から、戦いの日々です。仕事、勉強、スポーツ。いろいろなところで戦いを繰り広げていかないと生きていけません。逃れようと思っても、絶対に勝負しなければいけない業を全ての人は生まれながらに背負っています。
そう言った時に、己の才能のなさに嘆き、悔しい思いをしたり当面の間、挫折を味わったりするのはある種当たり前なのです。
ただこの作品は、そう言った才能や環境により壁にぶつかっている人間に、戦い方を教えてくれる作品ではないかと思っています。
努力の方向性、強い奴の倒し方。戦略の立て方。
限られた戦力の中でいかにして勝利を拾うか。
そこについて徹底的に掘り下げた本作は、学生、社会人、スポーツ選手、受験生など。今を戦っている人間ならば、選ばずに力を貸してくれるはずです。
具体的に名シーンを掘り下げていきたいと思います。
ということで、具体的に名シーンを掘り下げていきます。
アイシールド21名シーン1.蛭間のランプレー
関東最強との呼び声高い神龍寺ナーガ戦での名シーンです。
最強の敵、神龍寺を相手に、大差をつけられたデビルバッツは後半に怒涛の追い上げを見せます。
しかし、最後の最後に立ちはだかるのは天才金剛阿含。100年に一人の天才であり、努力をまったくせずともスピード、パワー、テクニックそのすべてにおいて超高校級の実力を持ちます。
そんな阿含がラストワンプレーで指揮官蛭間を後ろから追う。
蛭間のスピードを知っていた阿含は、勝てる勝算があると踏んで追走に向かったわけです。
しかし、寸でのところで阿含を振り切りタッチダウンを決める蛭間。
これによりデビルバッツVS神龍寺の試合は振出しに戻ります。
0.1秒縮めるのに1年かかったぜ。
蛭間の本来の40ヤード走のタイムは5.2ということで、並みの選手レベル。
そんな選手が0.1秒縮めたところで試合には何の成果も出ない。
スポーツをしたことがない人にはそう思われるかもしれません。しかし、実際にこうした形で結果が出ているところを見ると、地道な進歩こそが勝負で勝つうえでは大事なんだということを思い知らされます。
実際に蛭間も
どれだけ奇策、珍策を練ろうが最終的に物を言うのは基礎トレだ
というセリフを残していますね。
スポーツだけでなく、いろいろな分野で言えることだと思います。
このセリフは、いろいろな分野で置き換えて言えることではないかと思います。
どれだけ優れた作戦や戦略を建てようにもそれを実行するには、何を隠そう基本的な能力が必要になるのです。
勉強にしても基礎問題が解けるから、応用に取り掛かることが出来るし。仕事にしても同じくです。スポーツにしても、キャッチボールが出来ないとヒットは打てません。
そう。
高い点数を叩きだし多くの人に認めてもらうには揺るがない確固たる基礎が必要になります。
でないと、そもそもの作戦を建てるうえでの計算が立たないからです。
大人になって読み返した今。このセリフを作中随一の頭脳派キャラに言わせたことに感心を覚えました。
アイシールド21名シーン2.栗田VS峨王
この作品はシンプルな強さを描くのが上手いと思います。
最強のラインバッカ―進清十郎はベンチプレス140キロのパワーに40ヤード走4.2のスピードを併せ持っていて、小細工なしの強さを持ちます。
作中最強の敵、大和猛は絶対に倒れず、ゴールまで一直線で走るのが信条です。
ただ、最もシンプルにその強さを描かれているのはベンチプレス210キロを誇る、峨王力也だと思います。
スピード、テクニック、センス、そしてパワー。そのすべてを圧倒的な破壊力で粉砕し、相手選手をことごとく退場させてきたパワープレイヤーです。
この峨王力也に相対するのは、デーモンデビルバッツの巨漢、栗田良寛。
純粋なパワーのぶつかり合い。
その迫力にアメリカンフットボールの魅力がこれでもかというぐらいに詰め込まれています。
この一戦はスポーツの厳しさを教えてくれるゲームです。
白秋ダイナソーズ戦はスポーツの厳しさを教えてくれる、一戦だったと思います。
試合中に指揮官である蛭間が峨王のサックによって、退場させられ、そのほかの主力選手も圧倒的なパワーの前にねじ伏せられます。
味方を守れないのなら、ただ蹂躙されていくだけ。そう言った弱肉強食の世界を読者に魅せてくれる色んな意味で衝撃的な試合でした。
実際のスポーツも弱い奴はただねじ伏せられるのみです。
僕は野球をやっていたのですが、この白秋戦のように自分たちの実力がなければただ相手に好き勝手にやられるのみであり、これは厳然たる事実である。そう経験から言えます。
まさに、そこに勝負の世界の厳しさや奥の深さが詰まっていると思います。
こうして書けば、残酷な世界のように思えるのですが、そう言った過酷な環境で勝ちを目指すからこそ戦いは面白く、人を強くしてくれるのだと思います。
勝負の世界に足を踏み入れるのは自由。ただ、そこに一度足を踏み入れれば覚悟しないといけません。
アイシールド21名シーン3.デスマーチ
この作品は努力について掘り下げた作品でもあります。
そういった意味では、このシーンもまた印象に残るシーンではないかと思いますし、語らないといけないと感じます。
デスマーチ、「死の行軍」と呼ばれるこのトレーニングは2000キロを各自のポジションの動きを強化しながら走り抜くという、正気の沙汰とは思えないトレーニングです。
具体的には、ラインマンはトラックを押しながら、ランニングバックは石を蹴りながら緩急をつけた走りを身に着け、クオーターバックはパスコースを想定しながら、それぞれ2000キロ走る。という感じです。
トレーニングではなく、拷問とまで言わしめるこのトレーニング、各々が葛藤と戦いながら強くなっていくシーンは名シーンといっても過言ではないと思います。
本当に欲しい物は死ぬ気で頑張らないと手に入らない
何かを手に入れるには、それに不釣り合いなほどに努力しないといけない、ということを教えてくれるシーンです。
2000キロという悪魔のような距離を走った結果、デビルバッツのメンバーは学生の中で最も重要な期間である夏休みを全て棒に振ることになります。
作中のキャラクターがそこについて葛藤がなかったのかと言えば、自分の中で悩みに悩み抜いていたわけです。
ただ、弱いながらも前に進む者を見て「あいつがやっているんなら、俺もやらなくちゃいけねえな」と思い、一歩を踏み出すシーンはすごく印象的ですね。
効率も大事だが。時としては無茶も
最近は効率や生産性がもてはやされ過ぎている時代なのだと感じます。それは情報収集の手段が発達しているこの時代ならではの特徴といっても差し支えないと思います。
確かに、それもすごく大事です。他の人よりも近道しようという気持ちがなければ上のレベルにはいけません。
ただ、それを踏まえても時として無茶をする必要があるのだと、
ーーーーーーーあくまでも僕の主観ですが思っています。
三日三晩寝ないでパソコンの前に座って作業をしたり、時としては朝日が出てくるまで筋トレをしたり。頭から湯気が出るぐらい勉強したり。そう言った無茶をして、限界を超えることが己のキャパシティを広げるうえで一躍買っているわけです。
そして、デスマーチでも、まあ、そう言った無茶が描かれています。今の時代にこういったトレーニングを掲載し、それを賛美する内容を描けば、批判がくるのかもしれません。
ただ、それをふまえても、こういった「頭の悪い」トレーニングや努力を忘れず、時として覚悟をもって行うことは大事なのだと個人的には思っていますね。
アイシールド21名シーン4.進清十郎VS小早川セナ
最後に紹介したい名シーンはこれですね。
最強のライバルと合いまみえる、光速のランニングバックです。
進清十郎は努力の天才であり類まれなるセンスと、他の追随を許さぬほどの努力を繰り返す、努力する天才です。
そのプレースタイルは死角がないと言って差し支えありません。
そんな進清十郎に対して、速さというただ一つの武器で勝負を挑むセナにはどこかで勇気をもらえます。
勝負で勝つにはどうすればいいのか教えてくれる。
僕たちも人生において総合力で圧倒的に勝る人間と勝負しなければならないときがあるはずです。
それは、スポーツに限らず、仕事や勉強、私生活においても間違いのないことです。ただ、そう言った相手に勝つ方法が一つあります。
それは、自分の得意分野、専門分野で勝負する。つまるところ相手を自分の土俵に引きずり込む。ということですね。
総合力が2000ある相手に、1000の自分が勝つにはどうすればいいのかと言えば、次のようにすればいいのです。
自分 | 相手 | |
スポーツor趣味 | 0 | 600 |
勉強or仕事 | 0 | 700 |
得意分野 | 1000 | 700 |
その他の分野はもはや捨ててしまい、自分の得意な分野で勝てばいいわけです。
別に他のところで一番にならなくても良い、ただ、これだけは負けられないという部分を一つ身に着ければ、どんな物事にしても活路が生まれてきます。
小早川セナやデーモンデビルバッツも自分の得意な分野に相手を引きずり込んでその中で勝利を収めるという描写が多かったです。
これはまさに、弱者が勝ち上がって、さらにはのし上がっていく上で効果的な正攻法なのだと思いますね。
一芸でもそれを武器にできるのなら
どんな些細なことでもそれを武器にできるのなら、人生を充実させることはそれほど難しくない。
そういったことを、アメリカンフットボールというスポーツを通して教えてくれるのが当作品です。
生きる上での教科書とも取れ、ただ楽しんで読むだけではもったいないと思うのが一個人の意見です。
作品からはそれ以外の生きるヒントも得られるわけです。
ということで、いろいろな名シーンを紹介していきました。
という感じで、この作品を繰り返し読んだ一人間が名シーンを紹介していきました。
いかがでしょうか。
個人的に思っていることは、
スポーツというものは人生の縮図ではないかということです。
努力が報われるとは限らないし、また才能があるものだけが勝てるわけでもない。とある幸運がきっかけで勝ちを拾うこともあるし、その逆もしかりです。
これはまさに、人間の一人生を当てはめて考えることが出来るのではないかと、僕は考えています。
そしてアイシールド21という作品は、そのスポーツを今までにない以上に深く熱く掘り下げた名作。
これが人生において役に立たないかと言えば、絶対にそんなことはないと思っています。だからこそ今回は、最近再び読み返したこの作品をレビューしてみました。
私生活で熱い気持ちになれない人はオススメです。
同じことの繰り返しで、少しも熱くなれる機会がない。
そう言った人は、この作品を起点として心に灯をともしてみてもらえればと思います。
これ以上のない、起爆剤として作用するかと思います。
最後に、
やはり名作は色あせないし、それが漫画の良い所かなと思います。
ということで、ご清聴ありがとうございました。