僕はよく漫画を読む。
心の栄養源として。
僕は高卒で18から現場で働き続けた。学生時代は遊びほうけてたので、何の準備もせずに社会人になった。
そんな丸腰の僕にとって、その場所はハードモードだったと思う。良くある、中小企業のオペレーターをしていた。
夏場は地獄の釜のようで、蒸し風呂みたいに熱された工場内には金属によって飛び散った油が霧散し、首筋、額、頬などから湧き出る汗と混ざり合う。それが作業服の下に伝い、シャツとこすれ合うことで皮膚に膜をはっていき、絵も言えない不快感を生み出す。
冬場は冷えた金属がぶつかり合い、鼓膜をつんざく。夏と一転して熱伝導率の高い金属器の数々は工場を氷点下へと誘っていった。夏場あれほど煩わしかった厚手の作業用軍手のありがたみに気付く。
それでも、手のひらにはアカギレが散見し赤い肉がこちらを覗いていた。そこに、機械油がしみこむこともあり、中にはアトピー性皮膚炎が悪化する人もいた。
幸い僕の手のひらは野球で鍛えられていたので、ノーダメージだったが。
さらに、冬場は鉄と鉄のぶつかり合う音がすさまじく、耳栓の着用が義務づけられてもおかしくないはずなのだが。なぜかみんな、耳栓一つつけず作業に邁進しており、僕も次第に慣れた。
そう言った場所で飛び交う怒号は学生時代とは比較にならない。僕の心は次第にタフに変貌していったと思う。
同級生がきらびやかな大学生活を送るさなか、そこが僕にとって学びの場だった。
精神力がモノをいう職場での日々は心が痩せ細り、貧しくなってゆくのを感じる。
当時、彼女はおろか、友達すら出来なかった僕の心のよりどころは漫画だった。と言っても、漫画を買う余裕は何一つ無く、入社して最初の方は近場のインターネットカフェで土日を過ごすこともざらにあった。
今で言う弱者男性のカテゴライズになる。
でも、当時の僕はひたむきに漫画を読みあさった。
基本的には一度読んだら、二度目は行かないけれど、本当に好きな作品は二周、三周はしていた。
そうした、若い頃の習慣が今になっても残っており、電子書籍などを使うようになり、沢山の漫画を買い込んでいる。
文章を書くことが多い僕にとって、漫画は一つの参考資料になる。多くの人にとって娯楽の色が強い漫画も話の構造を分解し、細部にわたって見直すと、面白い話や興味深い話を作る部品がなんたるかを知ることが出来る。
料理をしていると、
「味の決め手」
と言う言葉を良く聞くが、面白い漫画や小説にも
「話の決め手」
が存在するように思う。
僕が読んで良かった漫画
未だに、生き方の指針になっている漫画は暗殺教室のように思う。
ヒット作を連発する松井